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13.03.17
コンプリメンタリー・カラー:スタジオにて、CJヘンドリーと

「リアリスティックなら良いというものではありません」2月にしては暖かい朝、トライベッカにある自身のスタジオで、オーストラリア人アーティストのCJヘンドリーは語りました。「人が『もっとリアリスティックに』と言うのを聞くと、私はとても違和感を覚えます」。けれど、ヘンドリーが驚くべきペースで熱心なファンを獲得してきた理由は、まさにそのリアリスティックさを実現してきたからこそ。生活雑貨や高級製品を見事なハンドドローイングで再現した彼女の作品は、思わず足を止めて見入ってしまうほどの精密さなのです。その写実主義的なドローイングは何度見返しても飽きません。彼女はこれまで数多くのアイコニックなファッションアイテムを描いてきましたが、幸運なことに、クリスチャン ルブタンの靴もその中のひとつでした。ヘンドリー自身も公言していますが、描かれた絵の驚くほどの正確さからも、彼女のルブタン製品に対する愛情が感じられます。私たち以上にルブタンの靴を理解している人がいるとすれば、おそらく彼女でしょう。ブランドを象徴するSo Kateやメンズの人気ハイトップスニーカーのLouis を描いた巨大な作品が、ギャラリーの壁やコレクターの家を飾ってきました。昨年11月に開催された待望の個展「The Trophy Room」でも、So Kateをひときわ目立つ場所に展示。このイベントでは、今の文化を映し出すアイコニックなアイテムをブロンズ液に浸し、それをスケッチした作品が並びました。

香港で開催される今年のArt Baselで私たちが誰とコラボレーションするかを考えたとき、CJヘンドリーの名が真っ先に挙げられたのはごく自然なことです。「色が織りなす文化」というクリスチャン ルブタンの精神に共鳴したCJは、慣れ親しんだ領域から踏み出し、新たな挑戦を決意しました。白黒だけの表現を避け、あらゆる色を使って描くことにしたのです。この個展は香港のフリンジ・クラブにあるAnita Chan Lai-ling Galleryで3月21日から始まります。あらゆるコンプリメンタリー・カラー(補色)の油絵具をたっぷりと使った概念的な表現は、新たなスタイルへの出発点です。「なぜもっと早く色を使わなかったのかしら!」スタジオで出来上がったばかりの作品群のそばに立ったヘンドリーは、そう声を張り上げました。50枚から成るシリーズ作品ではレッドが強調され、クリスチャン ルブタンを象徴するソールとの相乗効果やオマージュが明確に表現されるはずです。

3日間にわたるこの個展を訪れる人は、ギャラリーの白い壁を背景に、CJと共にカラフルな作品を制作する体験ができます。ルブタンとCJはちょっと変わったツールも準備していて、オープニングでお披露目される予定です。観客はそれを使って、まっさらな壁に色を乗せていくことになるでしょう。

Art Baselまで残すところ数日。稀代のオーストラリア人アーティストの創作の源を垣間見られる企画は、このイベントにぴったりだと私たちは考えました。ルブタンと同じフランス出身の有名作家マルセル・プルーストにあやかった私たちの提案を、ヘンドリーは快く受け入れてくれました。「プルーストの質問表」に、少しばかりルブタンのエスプリを加えて。

自分を表現するのに最も適した無生物は何?

ルービック・キューブ。色とりどりで変化に富んだ性格だからです。かなりマネジメントしにくい人間だと思うけれど、一度その仕組みを理解してしまえば、本当は単純なの。

今の心境を教えてください。

(やるべきことで)頭がいっぱいです。でも「何とかなる」と思っています。あまり自分らしいとは言えないのですが、今は流れに身を任せている感じです。

あなたが嘘をつくのはどういう時ですか?

人に合わせる必要があるとき、悪意のない嘘はつきます。私はただ、ここで一人になって絵を描ければいいのです。大体いつも正直者ですが、実際のところ私はとても内向的なの。人からは意外に思われますね。私は外交的にみえる人間をうまく演じていますから。

あなたにとって最大の恐怖とは?

何もしないでいること。大きなことを成し遂げるでもなく、何かを達成するための努力もせず、惰性で過ごすこと。これが私にとっての恐怖です。

男性の資質で、最も好ましいと思えるものは?

女性と張り合うのではなく、積極的に勇気づけ、支える能力。女性自身やその目標を受け入れ、励ますことのできる人の方が、強さが感じられると思います。

女性の資質で、最も好ましいと思えるものは?

私が大切にしているのは率直さです。いつも率直でいられるわけではありませんけどね。嫌いなのは作り笑いです。笑うなら心から笑ったほうがいい。

何度も使ってしまう言葉や言い回しは?

ああどうしよう、もうやっちゃえ!一番多いのは「生意気」かしら。二番目は「ヨット&ジェット」。桁違いのお金持ちをたとえて言う言葉です。「ビヨンセはヨット&ジェットよね」とか。いつも言っているのは「そう思う?」―これはオーストラリア人が使う言葉ね。あと「デッド(絶対)」は「イエス!」の代わりに使います。何かすごく興奮する出来事があったとき、全部言わずに「デーーーーーーッ…」とだけ言うこともあるわ。

最もよく買う洋服は?

白いTシャツ!たまには洗濯したものを着ますが、たいてい新品の箱から出して使います。私の一番の贅沢はこれかもしれません。高価なものではないし、ユニクロのセールでまとめ買いします。Tシャツを包装紙から引っ張り出して、その折り目を見るのが好きです。新品は最高よ!

あなたの人生の中で、最も愛しているものは?

間違いなく、私のシスターとボーイフレンドの2人です。私の最高の相棒。彼らがいなかったら死んでしまうかも。

最も幸せでいられるのは、どんな時、どんな場所ですか?

(ドローイング用のテーブルを指さして)そこで描いている時が最高に幸せ。そこにいることが好きなのです。自分がしていることがいかに素晴らしいことか、実感できるから。

一番ほしいと思う才能は?

人と人をつなぎ合わせてマネジメントできたら、素晴らしいと思います。私はあまり得意ではないので、もっとうまくできるようになりたいです。

今まで成し遂げたことで、最も良かったことはなんですか?

これまで素晴らしい出来事はたくさんあったけれど、結果的に一番良かったと思うのは、大学を中退したこと。少し消極的なように聞こえるかもしれませんが、他に選択肢やセーフティーネットがなければ自分で動くしかない。当時は色々思うところがあったけれど、今ではこれについて話すのは前より楽になりましたね。両親は否定的だったけど、それは無理もないこと。子供が美術の学位を取らずに中退することを願う両親なんていませんよね!しかも、残すところあと2教科だったのですから。

自分の持ち物で、最も大切にしているのは?

21歳の時に父からもらったBoseのノイズキャンセリングヘッドフォンは、今とても役に立っています。絵を描く時や、頭がいっぱいになったときにヘッドフォンを付けるのです。オーディオブックやポッドキャストを聴いたり、ノイズキャンセル機能だけを使うこともあります。

あなたの性格で最も個性的な部分は?

変化に富んでいて、とても激しいところ。激しさは長所にも、短所にもなりますね。私より思いやりのある人はいるけれど、私だって誰かを傷つけるつもりはありません。私の激しさが表れるのは、何をやるべきか、ということにだけ。こういう性格でないと、これ(絵を描くこと)はできないと思いますから、一長一短ですね。

友人に一番求めるものは?

友人はあまり多くないし、「ランチ友達」みたいなものが欲しいとは、一度も思ったことがありません。私が重視するのは、本当に落ち込んだときに救ってくれる友達であって、一日おきにおしゃべりする相手じゃありません。つねに近況報告する必要はないと思っています。離れていても、何かが変わるわけじゃないでしょ。

最もイライラすることは?

私は絶対時間に遅れません。もし万一遅れたら地下鉄の中で泣いちゃいます。たいていの場合、私をイライラさせるものに遭遇したら、すぐにオサラバするわ。ドラマチック過ぎるのは疲れるから。

パリとニューヨーク、どちらが良いですか?

ニューヨークです。ここにはチャンスがあると思います。

あなたのモットーは?

たったの2単語、「オール イン(全力で)」です。何をやるにしても、「全力で」やらないと。自分のすべてを使って打ち込まなければ、自分の持っている能力がどれほどのものか、何を成し遂げられるのか、真に知ることはできませんから。

「コンプリメンタリー・カラー」は香港のフリンジ・クラブにあるAnita Chan Lai-ling Galleryにて3月21日から展示されます。開催時間は、3月21日~3月22日が午前10時~午後9時、3月23日は午前10時~午後7時です。インスタグラムで @LouboutinWorld と @Cj_Hendry をフォローして、ここでしか見られない香港のArt Baselの最新情報をキャッチしてください。

Photography by Matthew Kelly